選書ツアーに参加した話/本と鍵の季節(米澤穂信)
先日、大学の図書館が企画した『選書ツアー』というものに友人と参加した。
選書ツアーとは、
図書館の本の選書に学生の意見を反映させるという名目で
学生を本屋に連れていくという催し物である。
しかし実際は参加した学生が学校のお金で自分の好きな本を買ってもらえるという、
本好きにとっては夢のような企画なのである。
今回参加するのは初めてだったため、
さぞかし多くの学生が参加するのだろうと想像していたのだが、
参加者は私含め6人だった。
はっきり言って悲しかったが、嬉しいこともあった。
参加者が少ないということは、
学生一人が選ぶことができる本の冊数が増えるということである。
(この時、私と友人は選書ツアーに他の友人たちを誘うのはやめようと心に誓ったのである。)
今回の選書ツアーの予算は、約15万円。
つまり学生1人当たり3万円弱の本を(学校のお金で)購入することができた。
本屋につき、図書館職員から簡単な説明を受けた私達は
思い思いの本を選び始めた。
以前読んで感銘を受けた本、表紙が気になった本、
図書館に蔵書されていないという事実が許せない本などなど
気になった本を片っ端から手に取り、用意された可動式の棚に並べていく。
(それはある意味、楽しい買い物というより作業と呼べるものであった。)
開始から30分。
作業にも疲れ、一休みでもしようかと本が並べられた可動式の棚を見つめていた時
あることに気がついた。
それは、棚に並べられた本の系統が全く違うということである。
本を選んだのは
日常的に本を読む、選書ツアーに魅力を感じる、
また選書ツアーに参加する行動力がある、等々
共通の特徴を持った学生6名であるはずなのになぜこれほどの差が出るのか、と疑問に思った。
また一方で、並べられた本の中で自分が選んだ本が目に入るたび何とも言えない恥ずかしさに襲われた。
なぜなら自分が選んだ本の系統から自分の趣味や趣向、学びたいこと、日々考えていることなどが推測されてしまうのではないかと思ったからである。
実際は自分がどの本を選んだのか申告する必要はなかったため、私が恐れた事態は起こらなかった。
しかし私はほかの参加者がどの本を選んだのか詮索したいという衝動にかられたのであった。(未遂、故に無罪)
米澤穂信さんの「本と鍵の季節」という本の中で
主人公の図書委員が
「亡くなった友人が最後に借りた本を教えてほしい」と依頼された際に
第三者に貸し出し履歴を教えることは、図書館の規則に反すると言い返すという場面があった。
この本を初めて読んだ際
私は図書委員の言い分が全く理解できず、依頼主に同情していた。
しかし、選書ツアーでの経験を通して
日々何気なく蓄積されている貸し出し履歴、
言い換えればどんな本に関心を寄せているかという情報は立派な個人情報なのだと実感した。
追記
選書ツアーではどんな本を選んでもよい(常識の範囲内)と言われていたので
「真夜中乙女戦争」(著者 ℱ)という本をこっそり選ばさせていただきました。
一言でいうと、大学生が戦争をもくろむ話。。。
ホームページはこちらから
本と鍵の季節|米澤穂信|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー